アルプス一万尺 〇〇の上で…?

こんにちは、金沢店です!

先日、なんともラッキーなことに見事な晴天が続いた3連休を利用して、北アルプス、槍ヶ岳の山頂直下にそびえる岩峰“子槍”でのクライミングを楽しんできました。そうです、あの有名なアルペン踊りの”子槍”です!

 

1日目: 新穂高温泉 ~ 槍平

2日目: 槍平 ~ 飛騨乗越 ~ 槍ヶ岳山荘 ~ 子槍

3日目: 槍ヶ岳山荘 ~ 槍沢 ~ 上高地

 

槍ヶ岳への最短アクセスとなる新穂高温泉からの飛騨沢に登路をとり、槍の穂先を間近に眺めながら3000mの稜線でのクライミングを楽しんだ後にメジャールートである槍沢から上高地へと下山する、北アルプス満喫周遊プランです。

 


 

[1日目]

初日は正午頃に新穂高ロープウェイを出発し、夏の日射しの中、初日のキャンプ地となる槍平を目指します。

槍、穂高連峰の玄関口となる平湯、新穂高へは富山駅から直行バスが運行されており、ここ北陸から北ア南部へアクセスは非常に良好です。しかしながら新穂高ロープウェイへの到着時刻が早くても正午頃と遅くなってしまいますので、槍、奥穂その他コースタイムを要する各方面へ向かう場合にはやはり、前夜あるいは早朝発でのマイカー利用が無難かもしれません。真夏には午後の高い気温の中を歩くことにも繋がり、水の消費もかさみ熱中症リスクも高まります。

我々も緑の木々の中ペースを守り、スポーツドリンクを補給しつつ進みます。滝谷出合では、冷たい水の流れる沢の上部に滝谷ドームがそびえ、迫力ある美しい景観を形づくっていました。

新穂高からのルートでは、途中、白出沢出合、滝谷出合と定期的に水を補給できるポイントがありますので、必要に応じボトルに給水しつつ登っていきましょう。ザックを下ろさずとも水を飲むことができるハイドレーションシステムは便利ですが、暑い時期にはついつい飲みすぎてしまって気付いたらリザーバーの残量が無くなってしまっているというケースも想定されます。予備として500ml程度の小型プラスチックボトルを携行しておくのも一案です。

また当日の気温に応じ、時に頭や首筋に冷水をかけて体温を下げる等の工夫も大切です。各社より発売されている軽量、速乾タオル等に保水させ首に巻いておけば、冷感が長持ちします。

結局この日は、標準コースタイム4.5hほどのところを4h少々で歩ききり槍平に到着しました。急ぐ必要もありませんので、この暑さの中では上々です。

 


 

[2日目]

この日は、気温が上がる中で日射しを遮るもののない飛騨沢を登るのを避けるため、早朝03:00からの行動としました。飛騨沢の登路は比較的明瞭ですが、夜間の暗い中での行動には光量のあるヘッドランプの携行と慎重なルートファインディングが求められます。

早朝、まだ周囲のテントが寝静まっている中で出発準備を進めます。このような状況では、周囲のテントを不意に大光量で照らしてしまい就寝中の方を起こしてしまわないよう、ヘッドランプの赤色灯機能が有効です。波長の長い赤色光は眩しさを低減するだけでなく、使用している本人の夜間視力を保つのにも役立ちます。テント泊に限らず、山小屋泊の方も是非、積極的に使用してみてください。(しかしながら赤色光の中でかき込む朝食は、ただひたすら味がしません…)

真っ暗な森の中を進み、森林限界を超えたあたりで主稜線の向こう側の空が明るくなってきました。ここからは足元に不安定な浮石も増えてきますので、飛騨沢上部のガレ場を慎重に登っていきます。

出発から約4時間の後、槍ヶ岳山荘に到着し受付を済ませ再度テントを設営します。槍ヶ岳山荘のキャンプ場は設営場所が限られており、サイトも指定制となっておりますので、面倒でも必ず先に受付を済ませてから指定された場所にテントを張りましょう。槍ヶ岳山荘では、ハイシーズンに到着時刻が遅くなると、サイトが一杯になってしまい近くの殺生ヒュッテまで下ってテントを設営しなければならない場合もでてきます。稜線でのテント泊を目指す方は、早め早めの到着を心がけるのが吉です。

今回使用したテントは、oxtos ULシングルウォールテント2人用です。フロア短辺118cmと二人での使用に最低限必要な広さを有しつつ運搬総重量を1077gに抑えた軽量モデルで、ロープやクライミングギア等を担がなければならず荷物の嵩む山行には重宝します。本体生地の耐水圧が1000mmまで確保されており、ある程度の雨までは問題なく凌げる点もこのクラスのテントとしては非常に優秀です。

さて、少々の昼寝の後に、のんびりと子槍の登攀へ向かいます。

※“子槍”は、鎖やハシゴで整備された一般登山道のないクライミングルートです。クライミングロープを使用したビレイ、ラぺリング等の技術を必要とします。未経験、あるいはご自身の力量に自信のない方は、必ず十分な技術をもつ経験者と適切な装備を整えトライしてください。

いきなり子槍の頂上での写真ですみません…(クライミング、ビレイ中は“基本的に”手が離せないので、パートナーと1on1で登る際にはなかなか写真が撮れません)

詳細は割愛しますが、子槍の頂上へはガレ場のアプローチの後に2ないし3ピッチのクライミングで到達できます。途中のアンカーは心許ない部分もありますので、上部ピッチはロープの流れを気にしつつ一気に上まで抜ける方が良いかもしれません。

子槍のクライミングそのものの難度は高くありませんので、ある程度のスキルがあればライトアルパイン系の登山靴のままでも登ることはできますが、今回は新しく購入したSCARPA Maestro MIDの実力を試すべく、敢えてクライミングシューズを持参してみました。十分なソールの硬さがあり、足指がリラックスできるサイズ感で履いても細かいスタンスに容易に立ち込めます。登山靴でリードすると核心部のトラバースやチムニー下部はプロテクションの古さもあり少し怖かったりするのですが、今回は安心して足を乗せていくことができました。長時間着用することも多いアルパイン系のマルチピッチには大いにオススメです!

…今回は子槍でのクライミングシーンの写真が撮れなかったため、以前、チームを組んで子槍でのクライミングシーンを撮影した際の1枚を掲載します。これだけの標高とロケーションで爽快なクライミングが楽しめる子槍は、個人的にもお気に入りのスポットです。

岩峰の上で暫し静かな時間を楽しんだ後は、懸垂下降で子槍の基部へ戻り元のアプローチルートをトラックバックします。60mのダブル、ツインロープであれば頂上から一気に基部まで下ることができますが、50mないし60mのシングルロープであれば途中のラペルステーションで一度ピッチを切った方が無難です。頂上の残置アンカーからクライマーズライト方向へ振りながら下降すると真新しいPETZLボルトのラペルステーションが設置されています。

昼過ぎにはクライミングも終えてテントに戻りましたので、あとはのんびりと北アルプス主稜線での時間を楽しむだけです。キャンプ地の周りには可憐な高山植物が咲き乱れており、周囲を散策するだけでもついついシャッターをきる回数が増えてしまいます。

そして夕暮れの時間。西鎌尾根、赤岩尾根越しの三俣蓮華岳方面です。これこそが北ア主稜線でのテント泊の醍醐味ですね。幸せなひとときを過ごし、長い1日を思い返しながらシュラフに潜り込みました。

 


 

[3日目]

この日も暑さを避けるため(我ながら、どれだけ暑いのが嫌なのでしょう…)、早朝03:00の行動開始です。

しかし早朝だからこその絶景も。この日は半月でしたので、大槍の穂先が満点の星空の下で月明かりに照らされ浮かび上がっていました。暗いうちの行動には自信のない方も、もし体力に余裕があれば夜中に少し起き出して空を眺めてみるのも良いかもしれません。そこには暗く、光害の少ない高い山の上だからこその普段は目にすることができない絶景が広がっているはずです。

ちょうど槍沢の底に太陽の光が射し込む頃に、二ノ俣のあたりまで下山してきました。朝の光に照らされた槍沢の清流は、個人的には北ア南部の中でも1、2を争う大好きな景観です。行動時間に余裕のある方は、是非少しばかりの時間をとってゆっくり楽しんでみてください。

槍沢のルートは歩行距離、時間共に長く、登るにせよ下るにせよ脚への負荷が高い長丁場となります。水、そしてカロリーの補給を忘れずに、焦らず、余裕をもった計画で一歩一歩、着実に歩いていきましょう。

 


 

以上、3日間の北アルプス山行レポートでした。気温の高い日が続いております。皆さまも是非、装備、体力共に準備を整え、涼しいアルプスの山々に挑んでみてください!

オクトスでは、装備に関するご相談から技術的なトピック、そして山行のプランニング、ルートのご相談まで、経験豊富なスタッフが皆さまをお迎えしております。山登りに関することでご不明な点は各店スタッフまでお気軽にお尋ねください。そして是非、皆さまの楽しかった山の話も聞かせてください!我々スタッフも山に行きたくてウズウズしています(笑)

 

金沢店 / WEBSHOP 西村

 


 

[スタッフのイチオシ!]

 

シンプルで軽量なミニマム志向のテントです。積極的に軽量化を図りたい方にオススメ!

登山靴を担いでのクライミングには、左右を別々に収納できるシューズケースが便利です。小型パック内でも嵩張りません!

350ルーメンの大光量を誇るハイスペック多機能ヘッドランプです。暗い時間帯に積極的に行動する際の強い味方です。

落石リスクの高い登山には是非ヘルメットを。携行に便利なオリジナルヘルメットホルダーがが付属します。

日射の厳しい夏の日は、これがあるだけで格段に快適になります。熱中症予防のため積極的に帽子を活用しましょう!

なんといっても水分補給!喉が渇く前に少しずつ補給できるハイドレーションシステムは夏山の必須アイテムです。