風雪の穂高には、必要以上の備えを

金沢店です!

北アルプスの山々は、いよいよ白く雪を纏い、一歩また一歩と冬の香りが近づいてきていますね。今回は、そんな北アルプス南部の穂高連峰への山行レポートです。写真も交えつつボリュームたっぷりです。温かなココアを片手にお楽しみくださいませ!

 


 

今回は、入山前夜のうちに上高地まで移動しておきましたので、初日で一気に涸沢を通過して穂高岳山荘のテントサイトを目指します。真夏と違って汗をかかずにすむので、ガンガン飛ばして歩けます。途中、涸沢ヒュッテでラーメンをいただき栄養を補給しつつ、無事まだ日の高いうちに穂高岳山荘まで登りきることができました。

当日はちょうど月齢15、笠ヶ岳方面に日が沈むと同時に、遠く蝶ヶ岳のむこうから明るい満月が昇ってきました。日中、15℃はあろうかというポカポカの陽気の中でザイテングラードを登ってきたのとは一転、気温は一気に氷点下まで下がります。

この季節は好天時の日中と悪天時や夜間との体感気温差が激しく、レイヤリングシステムに悩む方も少なくないでしょう。下手に冬季のレイヤリングで入山すると日射しの暖かさに汗をかいて汗冷えを起こしてしまったり、あるいは逆に夏の延長線上にある気持ちで軽量ダウンジャケットを1着だけ持参して夜の寒さに凍えてしまったり……。

そんな方に、ヒントを一つ。晴れた日中の行動着は薄手から中厚程度のシャツそして状況に応じて透湿性のあるウインドシェル程度に留めておき、1日の行動を終えた瞬間に、そのシャツを脱いで厳冬期用のウールのベースレイヤーに着替えてしまいましょう。肌に近いレイヤーを暖かく乾いたものに変えるだけで、分厚くかさばる厳冬期用のダウンジャケットも、何枚ものハイロフトフリースも必要なくなります。(※もちろん、寒さの感じ方には個人差があります。解決策の一つとしてご検討ください)

この日は、夜半に多少の降雪が予報されており、翌日の行程を案じつつ身体を丸めてシュラフに潜り込みました。

 


 

さて、翌朝……。

深夜に一度、目を覚ました際にテントが雪で埋まっていたことから容易に想像はできていたのですが、なかなかのまとまった降雪量となっていました。

こうなると、“憧れの奥穂高岳” は一気に、まったく別次元の山登りへと変貌してしまいます。春のシーズンにも言えることですが、岩場に慣れている、アイゼンを着けて歩いたことがある、その程度ではとても太刀打ちできないシリアスな登攀。それが雪の奥穂高岳です。

この日、本来であれば我々は(多少の着雪、氷結は承知の上で)ジャンダルム飛騨側でのリッジ登攀、そして西穂高岳までの縦走を楽しむ予定だったのですが、想定以上の積雪量、また予報よりも視界の回復が遅れていた点から、十分なセーフティマージンをとって奥穂高岳の山頂まで往復した上で涸沢方面へと下山することにしました。

これが10月から11月にかけての北アルプスの怖いところです。上高地は紅葉最盛期、穏やかな景色を眺めながら涸沢まで登り、余裕があるからと主稜線まで上がってしまうと、一夜にして超・本格派の冬山の中に閉じ込められてしまう可能性があるのです。この季節の北アルプスに関しては、装備、技術、判断、どれだけ慎重になっても備えすぎということはありません。

 


 

さて、今回使用した装備品を一部ご紹介します。

[Arc’teryx Alpha FL 45]

究極のアルパインパックです!!

リンク先オンラインショップページにもスタッフレビューとして書かせていただいておりますが、3日程度のテント泊であればテントやシュラフ等の生活用品からロープやクライミングギアまで全てを詰め込んでこなすことができるサイズ感、シンプルで超軽量、頑丈で防水、快適なショルダーハーネスと非の打ちどころがありません。

これは当初メーカーから発売されてすぐに東京のブランドストアで購入したものですので、現行モデルとは細部に違いがあり、また一部個人的にModificationも施しておりますので正規のものとは使い勝手も異なりますが、それでも完成度の高いバックパックであることに違いはありません。

自称でも他称でも構いません。“コア” なマウンテニアの方は是非!

[Arc’teryx Sigma FL Pants]

こちらは、今シーズンから新たにラインナップに加わったライトウェイト・ソフトシェルパンツです。“FL”、Fast & Light の名に恥じないArc’teryxらしい完成度です。

今回に関しては、気温は下がっても-10℃程度と見込んでいましたのでベースレイヤーは着用せず1枚履きで済ませましたが、入山から下山まで、あらゆるシチュエーションで快適に着用し続けることができました。

生地にはハリがあり、かなり強力な撥水加工が施されています。多少の雪であれば全く問題なく使用できますが、湿雪の中で膝高以上のラッセルを続けるようなシチュエーションでは濡れが気になってくるかもしれません。ある程度の風は防いでくれますが、同時に透湿性をかなり重視している印象で、決して吹雪の中で使いたくはないヌケの良さでした。フィットと運動性は言わずもがな、どんなハイステップもストレスフリーです。

総じて、積雪量の少ない、-15℃から+15℃程度までのミックス帯において、スピーディに運動量を保ち続けられるルートをこなす中級者以上の方に最適です。

裾にクランポンパッチ、インナーゲイター等は装備されておりません。ショックコードを接続するグロメットが左右に設けられているのみです。個人的には、この潔さが好きですが、クランポンの爪を引っかけてしまったり、あるいはご使用のブーツによって雪の侵入が気になるという方は、もう少しウェイトのある頑丈なシェルパンツを使用した方が無難でしょう。

 


 

そうこうして商品レビュー用の写真を撮影しながら下山していると、穂高岳山荘に戻る頃になってようやくガスが抜けて青空が見られるようになってきました。やはり、雪がついて晴れた穂高は最高にカッコイイです。

あとは、“前夜までに凍った硬い雪の上に湿った新雪がのり、それが日射でグズグズにとけた” 最低、最悪のザイテングラードをチョイと下るだけです。あっという間ですね。

……そして涸沢の夜、せっかくの満月&星空です。これを撮らずにはいられません。

月明かりに照らされ星空の下で白く輝く穂高の峰々です。この景色を見るためだけでも、寒さに震えながら晩秋の穂高を訪ねる意義があるといえるかもしれません。(嗚呼、小屋の中はさぞ暖かいのだろうナァ……)

最後に、雲一つない最高のモルゲンロートをご覧いただいて今回のレポートの締めくくりとさせていただきます。

……まったく、下山日に限ってこんなに晴れるんですよね、前日はあんなにガスガスだったのに。きっと私のせいです。私、仲間内では「吹雪男」とか「ストームおじさん」とか呼ばれております。

 

金沢店 / WEBSHOP 西村

 


 

[スタッフのイチオシ!]

 

凍結した登山道では、滑落、転倒のリスクも高まります。今回、我々が入山中にも、ザイテングラードにおける転倒事故がありました。

ヘルメットは万能ではありません。登山・クライミング用のヘルメットは原則として直上方向からの小規模な落石に対応するものです。しかしながら、軽く足を滑らせただけでも頭部を岩角に打ちつけてしまえば、それだけで行動不能に陥ることも有り得るのです。たとえ “Better than nothing” であったとしても、少しでもリスクを感じるならヘルメットを着用するデメリットなど微々たるものです。正しく理解して、適切にリスクをマネージしましょう。

 

この靴下に出会ってからというもの、特に冬季はコレ1本です。その名のとおり、特にカカトまわりのフィットが抜群で、ソールの硬い冬用ブーツを履いて長時間あるいても全く靴ズレしません。ブーツの中で靴下のヨレ、シワが気になってしまうという方は是非お試しください!