ARC’TERYX Proton LT,FL比較レビュー 甲斐駒ヶ岳 奥壁中央稜編

オクトス富山店です。ご無沙汰しております。

夏は忙しくて、なかなか山行記録などを書けずに気が付けば冬です。

まあ冬も冬で忙しいのですが、今シーズンARC’TERYXから登場した商品が非常に興味深いので、その使用感のレビューを山行記録と併せてこちらで紹介させていただきます。

 

ご紹介するのは、こちらの2点!

 

Proton LT Hoody

 

 

Proton FL Hoody

 

ここ数年で業界内の一大トレンドとなっている「アクティブインサレーション」、つまり行動中に着用してもオーバーヒートしにくい保温剤・構造を採用したウェア群のひとつです。従来のダウンジャケットやフリースなどでありがちな「休憩中はちょうどいいけど歩き始めたら暑いからすぐ脱がなきゃ、面倒くさい」という悩みを解決するウェアですね。

 

同じARC’TERYXのアクティブインサレーションであるAtomシリーズと比較して、Protonシリーズは生地本体の防風性、耐久性が高めに設定されております。このため岩やバックパック、ロープなどのクライミングギアとの接触が想定されるシチュエーションでも安心して使用することができます。また、Atomシリーズよりもあえて保温材を少なくすることで、オーバーヒートを防ぐ方向に特化したウェアだと言えます。

 

では、同じシリーズであるProtonのLTとFLは何が違うの?というのが本題。ズバリ、そのProtonの中でも前者は保温力重視、後者は透湿性重視なのです。

中綿も実は異なるタイプのものが封入されており、FLの方が透湿性重視の保温材を採用しています。

そのコンセプトは、裏地を見ても明らかに分かります。

↓こちらがProton LTの裏地

↓そしてこちらがFLの裏地

LTの方が生地の密度が高く、空気の流れを止めてくれそうな印象があります。

しかし状況によっては、それがオーバーヒートを引き起こす可能性もあるのです。

カンタンに言えば、

ランニングやアルパインクライミングといった汗をかくほど強度の高い運動を伴う場合はFLが、

基本的にゆっくり歩くだけ、あるいは体質的に寒がりという場合にはLTがベターなチョイスになるということです。

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説明が長くなりましたが、実際に使った感想を以下に記します。

 

今回使用したシチュエーションは、南アルプスの甲斐駒ヶ岳のバリエーションルート、奥壁中央稜の登攀です。

写真を撮る余裕がほとんど無かったのですが、2日目の行動を簡単に紹介します。

 

0400 五合目小屋跡地のテント内で起床

0500 五合目小屋跡地を出発

0700 取り付き到着 登攀開始

1500 登攀終了 一般道へ合流

1750 五合目小屋跡地のテントを回収

2140 駐車場(竹宇神社)帰着

 

…いかにも写真撮影の余裕がなさそうな行動ですね!登攀に時間をかけすぎてしまいました。

 

 

上の写真は3ピッチ目の核心部を越えて、傾斜の強い草付をひたすら駆け上がっている場面です。

このような登攀では、激しく動くシーンと、ビレイ(確保)のために立ち止まって動かないシーンが交互に現れます。そのため従来の中間着では「着て動くと暑い、でも脱ぐと立ち止まった時に寒すぎる」というジレンマが生じます。かと言っていちいち着たり脱いだりは面倒なので、ほどほど熱気を逃がしてくれるウェアが必要なのです。

 

今回はLT、FLを共に持っていきましたが、この登攀の場面ではより透湿性の高いFLを着用する前提でレイヤリングを組み立てました。

着用していたのは、肌に近い順に

①Konseal Hoody

②Proton FL Hoody

③ALPHA SV Jacket

この3枚のみです。念のためザックにProton LTを忍ばせておりましたが、FLだけで強風の稜線上でも必要十分な保温力はあったと思います。ただ、ビレイで30分ほど立ち止まっていると少し背筋が寒い感じがしましたし、この辺りは気象条件や個人差もあるかと思いますので一概に何が正解か断言することはできません。

またFLは、フードの頭頂部にあえて保温材を封入しておりません(フードを被った時のネックウォーマーくらいの位置までは保温剤入りです)

そのためヘルメットの下やハードシェルのフードと二重に被ってもゴワついたり頭が熱くなってしまうことはありませんでした。こういう工夫をしてくれる辺りに、山で本気で使えるウェアだという信頼感が生まれますね。

 

さて、我々は登攀を終えて下山に移ります。

暖冬とはいえ、陽が完全に落ちた南アルプスは放射冷却もあって非常に冷え込みました。

テントを回収すると、一貴に荷物が重くなります。ここでハードシェルを着用したままだとすぐに汗をかいてしまうな、と感じてSVジャケットをザックに収納し歩き出すのですが、いかんせん冷え込みが厳しくFLでは寒い!

ということで、LTの出番です!FLを脱いでLTを着用、レイヤリングは以下に変化します。

①Konseal Hoody

②Proton LT Hoody

写真でご覧いただいたように、FLは裏地が良い意味でスカスカなので、着用しても保温力がある印象は正直ありませんでした。

しかし裏地のしっかりしたLTを着用すると、羽織った瞬間から保温力の違いを感じることができました。

しかしそれでいて、必要以上に保温しすぎない絶妙なバランス。暑すぎず寒すぎずで、快適に駐車場まで戻れました。

本体のストレッチ性も優れていますので、ハシゴや鎖場の通過もスムーズです(これはFLも同様ですが)

 

さて、いかがでしたか?

今回はテストを目的にした山行で、実際にFLとLTを2着持っていくことは少ないと思いますが

ありふれた登山者の素直な使用感を報告させていただきました。

この情報の中から何かヒントを汲み取っていただき、皆様の最適な商品選びの役に立てたなら幸いです。

各個人の嗜好するスタイル、遊び、気象条件に応じて多彩な選択肢を用意してくれて、

しかもその全てが高水準。それがARC’TERYXの商品の素晴らしさなのではないでしょうか。

 

今回は甲斐駒ヶ岳で使用しましたが、これからもテストは続きます。お楽しみに~

 

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おまけ

 

Protonシリーズと全く関係ないのですが..

奥壁中央稜には1,4p目にワイドクラックがあります。そのため体を突っ込んでボディフリクションも活用して登らねばならないのですが、パートナーが着用するマンモスM社のハードシェルが一撃で穴空きになったのに対し、ALPHA SV Jacketは全くの無傷で乗り切りました。そのあとの藪漕ぎ、木登りも全く意に介さぬ圧倒的タフネス。それでいて動きを全く妨げない完璧なカッティング。稜線で爆風に叩かれてパートナーが寒いと言っているのを、「そう?」と涼しい顔で流せる堅牢さ、そして軽量さ(100デニールの生地で総重量490gですよ!?)

本気の使用に応えてくれるハードシェルとして、私はALPHA SV Jacketを強く推奨いたします。

すみません、感動のあまり駄文を書きました(笑)